公正証書を作成する上で取り決めるべき事項

公正証書を作成する上で決めておくべき事項には大きく分けて以下の6項目が挙げられます。

1 親権
2 監護権
3 養育費
4 面接交渉権
5 慰謝料
6 財産分与

1   親権

親権とは、子が成人するまで、子の利益のために子を監督・保護・教育し、またその財産を管理する父母の権利義務のことを意味します。
親権は法律的には「身上監護権」と「財産管理権」に分けられます。
「身上監護権」とは、実際に未成年の身の回りの世話やしつけ、教育をすること、「財産管理権」とは、未成年が自分名義の財産を有している場合や法律行為をする場合に未成年の子に代わって財産の管理や契約をすることをそれぞれ指します。
基本的に親権者を父母のどちらにするかは、夫婦の話し合いにより決定します。
そしてどちらを親権者とするかが決定すれば、その旨を「離婚協議書」及び「離婚届」に記載します。
通常、親権者と監護権者(未成年を手元において養育する者のこと)は同一人物です。
しかし、子供の福祉のために親権者と監護権者を分離する必要がある場合は、親権者でない父母の一方、又は第三者を監護権者とすることも可能です。
親権者と監護権者を決めるにあたり、注意しておかなければならない点が3つあります。

ⅰ)監護権者は離婚後でも定めることができますが、親権者は離婚前に必ず定めなければなりません。

ⅱ)監護権者の承諾なしに無断で子供を外に連れ出したりすると、それがたとえ実の親でも未成年者略取誘拐罪になる場合があります。

ⅲ)監護権は戸籍上の記載がありませんので、両親の間で協議が整いさえすれば変更することができます。

しかし、親権は家庭裁判所に親権変更の申し立てをしなければ変更することができません。
さらにこの親権変更の申し立ても

・親権者が子供を家に残したまま遊び歩いている。
・子供に対して虐待を行っている。
・食事を与えない。
・親権者が長期入院のため子供の世話をすることができない等・・・。

子供の利益を守るために必要があると認められるような限られた条件下でしか認められていません。
親権の決定は子供の将来に関わることですから、これらの点を踏まえた上で慎重に検討して下さい。

2    監護権

監護権とは未成年を手元において養育する権利のことを言います。
イメージとしては「財産管理や法的な手続き以外の子育てをする権利」と思って下さい。  
通常、監護権は親権の一部ですので親権者が有することになります。
しかし、親権者と監護権者を別に定めることも、更には第三者が監護権者となることも可能です。
また先述の通り、監護権は戸籍上の記載がありませんし、離婚届に親権者を書く欄はあっても、監護権者を書く欄はございませんので当事者の合意のみで決定することができます。

3    養育費

養育費とは「未成熟の子供が親から自立して生計を営めるようになるまでに必要とされるすべての費用」、平たく言えば「子供を育てていくのに必要なお金」を指します。
よく誤解されがちなのが、養育費を請求できる権利を有するのは、監護権者ではなく子供だということです。
故に、仮に夫婦が離婚をする際に「養育費の請求は一切しない」という取り決めをしたとしても無効ですし、いつでも養育費の請求は可能です。
更に言えば母親(父親)が再婚し、再婚相手と子供の間で養子縁組がなされたとしても養育費を支払う義務は減額されることはあっても免除されることはありません。
また、養育費の額は一度決めてそれを書面に残していた場合は後々変更することが困難です。
とは言っても現実問題、子供の進学や病気・怪我等で不測の出費がかさむこともあると思います。
そういう場合を想定してあらかじめ離婚協議書に「子供の進学や病気などの際には、養育費を増額することができる。」という項目を盛り込んでおけばより確実です。
ただここで注意しておきたいのがこのような場合に増額できるのはあくまで養育費であり、慰謝料や財産分与はこのような増額の対象にはならないということを知っておいて下さい。

4    面接交渉権

面接交渉権とは、親権(監護権)のない親が子供に会う権利のことです。
また、面接交渉権は親であれば当然に有します。
それ故、「養育費は支払わなくていいので、子供とは会わないで下さい。」といった取り決めをしたとしても、それは無効となります。
子供と会う頻度については少なくとも半年に1回としなければなりません。
しかし、親権のところで述べたとおり、監護権者の承諾なしに無断で子供を外に連れ出したりすると、それがたとえ実の親でも未成年者略取誘拐罪になる場合があります。
こういったトラブルを未然に防ぐためにも

・子供を親権(監護権)のないほうの親に会わせる回数
・日時
・方法
・場所

といった具体的な取り決めを離婚協議書等で書面にしておきましょう。

5    慰謝料

慰謝料とは、相手方の不法行為によって精神的・肉体的な傷を負い、その傷に対する慰謝の意味で支払われる金銭のことをいい、損害及び加害者を知った時から3年間の間であれば請求できます。
この慰謝料は基本的には相手方の浮気や暴力といった不法行為を前提とするものです。
故に離婚の原因が「性格の不一致」や「価値観の相違」など、夫婦の双方に責任があると考えられる場合は、原則として慰謝料の請求はできません。
しかし、このような不法行為がない場合でも当事者同士の合意があれば離婚に対する慰謝料の取り決めをすることは可能です。
要は協議離婚なので当事者同士で合意に達してさえいれば、どのような取り決めでも原則として有効だということです。
また慰謝料については金額がよく問題になりますが、その算定には明確な基準は存在しません。
慰謝料の金額についても話し合いがつけばいくらでも構わないので、相手方が支払い可能な範囲で決めることをお勧めします。
慰謝料の対象となる不法行為はいくつかありますが、ここではその最たる例である浮気について言及します。

浮気が原因で離婚に至った場合は配偶者(夫から見た妻、妻から見た夫)だけでなく、浮気相手に対しても慰謝料を請求できます。(ただし、浮気相手が自分の恋人が既婚者であることを知っていた、あるいは知ることができた場合に限ります。)

ただ、浮気は配偶者と浮気相手の「共同不法行為」なので、その責任は連帯責任となります。
例えば、浮気の慰謝料として浮気相手に100万円請求して支払われた場合、もう配偶者には請求することはできません。
浮気相手から配偶者へ50万円の請求がされるだけです。
上記のような慰謝料が問題になったときのために知っておきたいのが「慰謝料は破産財産に含まれない。」ということです。
ですので、例え相手方が自己破産をしたとしても慰謝料を請求することは可能です。


6    財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に夫婦二人の協力によって築かれた財産を離婚するにあたり二人で分けることを指し、離婚の時から2年間の間であれば請求できます。
慰謝料等と異なり、財産分与は離婚の責任がどちらにあるのかは問いませんので、離婚の原因を作った方からの請求も認められます。
気になる財産分与の分ける割合ですが、一昔前なら共働きの場合なら5:5、奥さんが専業主婦で旦那さんが働きに出ている場合なら7:3とされていました。
しかし、昨今では奥さんが働いているか否かに関わらず、5:5とするのが主流のようです。
「奥さんの内助の功があったからこそ、旦那さんが仕事に専念できた。」というのがその理由のようです。
ですので、例えば旦那さんが婚姻期間中に500万円貯金していた場合、その半分、つまり250万円が奥さんのものとなることになります。
また財産分与の対象となる財産は原則として「今」存在する財産ですので、すでに消費してしまった分はその対象となりません。
ここで誤解されがちなのが、「じゃあ貯金して買った500万円の車は財産分与の対象にならないのか。」ということです。
これは500万円が現金ではなく、車というものに形が変わって存在するようになっただけなので財産分与の対象となります。
ここまでは、現金を財産分与する場合について述べてきましたが、上記の通り財産分与の対象となる財産というのは何も現金だけでなく車や不動産、そして株等もそれにあたります。
またここでも注意しておきたいのですが、この財産には車や家のローンといった負の財産も含まれますので注意が必要です。
ここからはこれらの現金以外の財産についてどのように財産分与をすればいいのか個別具体的に見ていきたいと思います。

<不動産>

不動産の分け方については大きく分けて以下の3種類あります。

・不動産を売却し、その売却金額を二人で分ける。
・不動産をどちらか一方が所有し、もう一方がその対価をもらう。
(例:500万円の土地を夫が所有する代わりに、妻に土地の価格の半分の250万円を現金で支払う。)
・不動産を二人の共有名義とする。

不動産にローンが残っている場合、このローンも原則折半となります。
この場合に考えられる手段としては


・不動産を売却したお金をローンにあてて、残ったローンを二人で折半していく。
・不動産をどちらかが所有し続け、今後のローンの支払いについては二人で話し合って決める。

等があげられます。
ただし、ローンのついた不動産の名義変更をする場合は銀行との協議が必要となるため注意が必要です。
例えば「家の名義をサラリーマンの夫から、専業主婦の妻にする」とした場合、ローンの支払いが滞ってしまうリスクが高くなるため、銀行はまず承諾しないと思われます。

<借家>

アパート、マンション等の建物を「借りる権利」も財産分与の対象となります。
この「家を借りる権利」についても、どちらかが住み続けるのか、あるいは引き払うのか等あらかじめ決めておく必要があります。
名義人がそのままに借り続ける分には問題はないのですが、名義人を変える場合には不動産屋の承諾を得なければなりません。
不動産屋が関わってくる問題としてもうひとつ挙げられるのが保証人の問題です。
夫の名義でマンションを借りていて奥さんがその家賃の保証人になっているとします。
この場合、離婚しても借家を解除しない限り、奥さんが保証人から抜け出すことは難しいのが現状です。
もちろん、大家さんが承諾すれば問題はないのですが、自ら自分が不利になる状況を作り出すとも考えにくいです。

<株について>

株の財産分与はその株が「公開株」か「非公開株」かによって手続きが異なってきます。
公開株とは上場している会社の株を指し、そのほとんどが証券会社を仲介して売買されます。
非公開株とは上場していない会社の株を指し、自社株である場合が多いです。
株を財産分与する場合は、証券会社や、非公開株の会社で株の名義変更の手続きをとる必要があります。
名義変更の手続きについては、非公開株の場合はその会社に、公開株の場合は証券会社等に問い合わせてみると良いでしょう。
もちろん、名義変更せず、その株をどちらか一方が持ち続ける代わりに、その分の対価をもう一方に現金で支払うことを約束することも可能です。

<車について>

婚姻期間中に取得した自動車の所有権だけでなく、ローンの支払いも原則折半となります。
自動車は不動産と違い、離婚後も2人で共有していくというわけにもいきませんので、どちらかが持ち続けもう一方がその対価をもう一方に支払うのが良いと思われます。
また、車を財産分与する場合に一番問題になってくるのがローンの支払いの問題です。
ローンの支払いが終わっている車の名義を変更する場合は、離婚協議書にその旨を記載し、陸運局で名義変更の手続きを行えば良いのですが、ローンの支払いが残っている場合は注意が必要になってきます。
車をディーラーや中古車販売業者からローンで購入した場合、所有権はローン会社や販売店にある場合がほとんどです。
このような車を「所有権留保車」や「所有権留保付自動車」と言います。
ですからローンの支払いを完済しない限り、車の名義を変更することはできません。(これを所有権解除と言います。)

また「車のローンの名義をサラリーマンの夫から、専業主婦の妻にする」とした場合、別に保証人を立てるか、担保を供与する等しない限り、ローンの支払いが滞ってしまうリスクが高くなるため、銀行はまず承諾しないと思われます。

加えて自賠責、任意保険等の保険の受取人の変更も勘案しておいて下さい。
これらの相談は保険会社に直接問い合わせるのが一番確実だと思います。

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